「お米ができるまで」(講談社)2015年7月



イラスト 武田美穂さん
口絵写真 田丸瑞穂さん

農作物は、その多くが一年に一回しか収穫できません。
お米も、もちろんおなじです。
つまり、20歳で作りはじめても、60歳までに40回しか作れない!
毎年が一発勝負。すごい世界です。

今回は、そんなお米づくりの世界を取材させていただきました。
ご協力いただいたのは、新潟県魚沼市の山のなかで、米作りにはげむ、
研究大好きで、生まれ変わったら研究者になりたいという、
若き米農家、「ダイヒョー」こと、小岩孝徳さんです。

ありがたいことに、小岩さんの家に寝泊りさせていただいて、
どっぷり、米農家の生活をにふれる機会をいただきました。
いやー、冬は寒いし、夏は暑いし、
雨には降られるし、虫の攻撃にあうし、
自然相手は本当にたいへんです!
でも、太陽にあたり、走りまわったあとのご飯のおいしいこと!
(「ババ」さんと「ツマコ」さんの料理の腕によるものが大きい)。
もちろん夜は自分の家よりも、ぐっすり眠れます!

取材に行くたびに、遠くに見える雪山に感激し、
雪解けと同時にあぜ道に顔を出した、すみれにうっとりし、
新緑のなかで行う田植えやトラクター操作に萌え、
(クルマ好きには、田植え機やトラクターはたまりません!)
秋に、黄金の稲穂が田んぼを覆ったときは、
その美しさに涙が出そうになりました。

しかも、「シンイリ」くんが、驚くほどすばらしい
失敗の数々を繰り広げてくれて、ネタ満載。
取材運の強さを実感です!

農業は、ひとりでもくもくと作業することが多いものの、
まわりの農家さんたちと協力して、用水路の手入れをしたり、
先輩に教えてもらったり、農機具販売店の人とやりとりしたりと、
実は、人と関わることがとても多い仕事です。
小岩さんに、米農家になるために必要なことはときいたら、
「人付き合いが、きちんとできること」という答えが返ってきて納得です。

毎日、食べるお米が、
たくさんの研究と努力と誠意と愛情で育てられたことを、
感じてもらえたらうれしいです。