「ハチ公物語 -待ちつづけた犬-」(講談社 青い鳥文庫)2009年7月



イラスト 真斗さん
撮影 田丸瑞穂さん

雨の日も風の日も、帰らぬ主人を渋谷駅で待ちつづけた、秋田犬のハチ。
渋谷駅に銅像が建てらた、ハチ公の物語です。
80年以上も前の話は、インタビュー取材ができないため、資料集めからはじめました。
どのくらいの資料が残っているか最初は不安でしたが、
林正春さんが残してくださった「ハチ公文献集」に出会うことができ、
飼い主だった東京帝国大学の上野先生とハチの絆の強さを知ることができました。

表紙の撮影は、シライ犬舎の子犬たちが協力してくれました。
秋田犬の子犬の破壊力はすさまじく、もう、それはそれはぬいぐるみのようにかわいくて、
思わず、連れて帰りそうになりました。
いまでもあのときの子犬の写真を見つめては、ほわほわとした気分になります。

本の最後で、ハチは虹の橋をわたるので、自分で書いたくせにそこで大泣きしてしまうのですが、
読み終わってパタンと本をとじると、上野先生のもとにきたときと同じ年齢の無邪気な子犬の表紙が視界にはいり、
このころは、上野先生とこんなせつない別れになるなんて、思っていなかったろうに……と、
それでまた泣いてしまいます。

電車の中や、ひと前では読まないことをお勧めします。