強風

午前中、ドクヘリ小説の校正をいただきに日本医科大学千葉北総病院におじゃましたら、
機長さんとCSさんが、口をそろえて、
「いまはこんなに晴れているのに、午後はとんでもない強風になるので、
ヘリは東京へリポートに避難させるんですよー」とのこと。
それを聞いて、ひえー、と、うなったのは、私とドクヘリ見学にきたソウルブラザーKである。
なんたって午後、ふたりとも羽田空港から飛行機に乗るのだ。
ヘリが避難しなければならない強風って……空港閉鎖になるんじゃないの???

ともあれ、今日もおじゃましました。ありがとうございました。
機長Nさん、CSのSさん&Tさん、医局秘書のSさん!

そして羽田。となりの松山空港は閉鎖(!)とのことで、超びびったけれど、
徳島便は、無事に飛んだのでありました。ゆれたけど(汗)。

飛行機を降りたら携帯電話に留守電が。声の主は、青い鳥文庫の担当ももちゃん。
「新刊の表紙の絵の見本があがってきたんですがっ! あまりにすばらしくて、私、ふるえちゃいましたっ!」
おおおー、それはすばらしいですー。うれしいですー。楽しみですー!

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到着したホテルは、目の前どころか、足元から海! 
*着いたのは夜だったので、この写真は翌朝、部屋から撮ったものでございますー。

沖縄の本部町の海に似ています。養殖の浮きが、ジンベエザメの生簀のようにみえて、なつかしくてじーん。

ドクヘリ・シンポジウム

やばいやばいと言いつつ、午前中は原稿書き。
午後は、ドクターヘリのネットワーク、HEM-Net主催のシンポジウムです。

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基調講演は、チームバチスタの栄光で有名な、海堂尊さん。
やっぱ、お医者さま、アタマいいわ~という講演でございました。

今回は、ドクターヘリ支援基金を開設にあたってのシンポ。
現在、国と道府県から運営費用がでているけれど、でもなぜか年間240回計算の額。
年間700回近く飛んでいる日本医科大学千葉北総病院などでは、完全に赤字なのです=特に運航会社(朝日航洋)。
しかも、ワケわからないのは、消耗品には使えない
つまり、ヘルメットやフライトスーツは、ぜんぶ病院の自腹負担になるわけです。
えーっ、なんで。ヘリに乗るのに必要なのに。
志ある病院は、負担が増える一方じゃん。

ドクヘリ導入がすすむなか、でも、ヘリだけあればいいってもんじゃなく、
まずは、指揮官としての力も必要なフライトドクターの養成と、
いないとなにもできない赤子同然とドクターに言わす陰の実力者:フライトナースの養成が必要なわけで、
そうした部分は、ぜーったい補助金は使えないので、広く民間から支援してもらおうというわけ。
つまり、「民」が「公」を支える新たな社会モデルの構築に、トライするわけです。

私、この発想はとてもいいと思っています。
なぜなら、どんな事業も「公」だけでやると、一般市民はどうも意見が言えない(民が積極的に参加しないことも)。
ほんとは、お互いがきちんと意見を出し合って、いいものをつくるのがベスト。
ゆえに、おっきな筋道をたてるのが得意な「公」には、その部分だけやってもらい、
各エリアごとに異なる細かな部分は、「民」で自由に采配をふるったほうが、
すごくいいものができると思うのです。

そんなにうまいこといくの?
そういう声も聞こえてきそうですが、できるできないではなく、やるためには、どうすればいいのか。
ドクヘリ私設応援団としては、団旗をうちふるっております。

日本救急医学会関東地方会

日本救急医学会関東地方会学術集会に行ってまいりました。

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小麦グルテンが原因で、ショック症状になる、という事例を聞いて、
パスタやパンやワッフルやホットケーキやカステラはもちろん、
マドレーヌだのドラ焼きだのマリー・ビスケットだのビスコだの……がないと生きていけない私は、
それだけでショック症状になりそうでしたよ、ウメカ先生。
しかも子供のころに出なくても、成人になってから出るケースが多いとか。がーん……。

さて、私の今回のお目当ては、ドクターヘリ取材でお世話になっている、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターと、日本大学工学部&理工学部が連携した、
日本初の医工学連携の総合的交通事故調査体制による、損傷原因究明システム。

警察の事故原因理由って「前を見ていなかった」「スピード出しすぎていた」の一点張り。
事故が減った理由についても「警察の取り締まり強化により」って、
おいおい、10年も前に21世紀になっているってのに……といつも舌打ちしちゃうんですよ。
予防安全にしても衝突安全にしても、ちゃんと現実見つめて、原因つぶしていかなくてどうする?

で、今回の医工学連携の場合、まず救命救急センターに運ばれてきた患者の損傷部位を把握し、
じゃ、車内のどこでどう傷ついたのかってことを、逆にたどっていくことができる。
机上の理論の衝突安全では見えてこない、現実がそこにあるわけです。
もちろん、患者と病院の信頼関係あってのこと。
退院後に協力してもらってこそ初めて成り立つ作業なので、一気にたくさんはできないけれど、
でも、好意的な患者による事故再現なので、それはそれはリアルなデータが集まるというわけ。

そして今日の発表で、げげげーっと思った事例発表がされました。
時速わずか25キロで石垣にぶつかった軽自動車の、
後部座席に座っていた70代の女性が、
シートベルトをしながらにして、心臓破裂を起こしたというもの。
25キロ、という数字は、あとから算出しているので、いささか疑問はあるものの、
でも、クルマの凹み具合を写真で確認すると、ほんとにバンパーとフレームがちょこっといっているくらい。
どうみても「大破」からははほどとおく、これで心臓破裂が起こるのか? と、目を疑いました。

女性は、胸骨粉砕骨折、心臓破裂(心タンポナーデ)、右肺損傷、右足骨折、という状態。
幸いにして救急隊の好判断でドクターヘリ要請になり、
徒歩退院できるほど快復されたので、今回の検証にご協力いただけているわけですが。
ちなみに高齢者が心タンポナーデになりやすい、というデータはないようですが、
今回は同時に胸骨粉砕骨折も起こっていることを考えると、
高齢女性の骨密度が低く折れやすい=心臓を圧迫しやすい、というのは、
十分に考えられることではないかと、医療シロウトの私は思うわけです。

現在、後部座席は高速道路に限りシートベルト着用の罰則強化あり。
でも、近い将来、一般道でも罰則適用になる方向で動いている。
後部座席のシートベルトにプリテンショナー&フォースリミッターを採用して、衝突ショックをやわらげないと、
そして、衝突アセスメントの点数をとるために、がっちがちに拘束するだけのシートベルトでは、
シートベルトで心臓破……という事例が、きっとこれからも起きるでしょうね。

少なくとも、前席にしかダミー乗せていない衝突アセスメントで、
「最高レベルを獲得しました!」と、お気楽に安全を宣伝するのは、いい加減にしていただきたい>国産メーカー。

医工学連携の交通事故調査は、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターの、阪本雄一郎先生と、本村友一先生、
小麦グルテンのアナフィラキシー例は、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターの、梅香満先生のご発表を参考にさせていただきました。

現場の真実

もはやルーティンワークにさせていただいている、
日本医科大学千葉北総病院、救命救急センターでの取材。

クルマを見つめ、自動車メーカー技術者の「言いわけ」だけを聞いていると、
それで納得してしまうけれど、でもやっぱり、現場には真実が落ちている。
落ちている、というのは、その場に真実が取り残されているからだ。
だれがその存在に気づき、拾い上げ、世の中に「つきつけて」いくのか。

今日も、交通事故関連の研究を続けておられるS先生にお時間をいただき、お話を伺う。
「ありえない!」
そう言いたくなるような、事故形態と負傷者の損傷部位に愕然とする。
ここまでくると、もはや医工連携は欠かせないと思う。

エアバッグとシートベルトの装着で、頭部と胸部の損傷は減り、
即死に近いケガは減っている。
でも、実質臓器と呼ばれる血液が充満している肝臓、脾臓、腎臓は、
シートベルトによって、傷つけられている。
ここが傷つけば、大量出血が起こり、病院に運ばれるのに時間がかかれば、
もしくは、すぐに開腹手術できる体制のない病院に運ばれれば、
確実に死んでしまう。

今日も気持ちの引き締まる思い。

でも、プリンはおいしい。=謎。