左折巻き込み

あれは私が、8歳のときのこと。
欲しくて欲しくてしかたがなかった、自転車を買ってもらったときのこと。

「大通りから向こうへは、行ってはいけません!」
そう、母と約束したものの、そんな約束なんて子どもの好奇心の前には、ないも同然。
バレるわけないしー。
そう思って、数日後、初・大通り越えに挑戦!
大通りの信号は青。
横断歩道をわたる歩行者といっしょに、自転車に乗ってわたりはじめたときのこと。

かつん。

右ひじに硬いものが当たり自転車ごとよろけ、左足をついて見上げると、
そこには、緑色のダンプカーが、壁のようにあったのでした。
どうやらあとで聞くと、ダンプの助手席に座っていた人が気づき、
急ブレーキに至った、ということでした。

「大丈夫っ!?」
いきなり大人たちに取り囲まれ、戸惑う私。
いやー、大丈夫って言われてもー。
子どもなので、おまわりさんまで来ちゃう、事態の深刻さが理解できず、
それよりも、母親にバレる……そのほうが、心配だったわけで、
とっととその場から逃げ去りました。
でも、案の定、一部始終を見ていた近所のおばちゃんにちくられ、
親からはこっぴどく怒られましたが。

だけどあの事故は、どうすれば防げたんだろう。
(親の言いつけを守れ、というのは、反抗心いっぱいの私のような子どもには無理です!)
いつも思うのは、交差点ではクルマと人の動線がクロスする怖さ。
スクランブル交差点にして、歩行者とクルマを分けるのが一番なのだけれど。

少なくとも、横断歩道は「歩道」なのだ。
右左折するクルマは、その「歩道」の上を走らせていただいているのだ。
その意識が低すぎるんだと思う。

子どもたちに、「青信号だからといって、油断はするな」。
そう教えることも大切だと思う。
でも、ドライバーは免許制度のある資格保持者。
子どもの動きを制限する前に、ドライバーがやるべきことは多いということを、改めて考えたい。

本日も朝から気持ちよく取材。
おこもりで減りつつある骨密度を、一気にとりもどせそうな、健康的な一日。

交通外傷、レベル300!

小児救命のエキスパートである某先生に、奇跡的にお時間をいただけ、お話を伺えることに。

この季節、新一年生になった子どもたちが、新しいランドセルを背負って、一人歩きを始める。
新しい友達。新しい学校。ピカピカのランドセル。
「おかあさん、あのね、今日ね!」
はやく伝えたくて、子どもたちは、家に向かう。
そんなときにも、事故は起きる。

「交通外傷。レベル300。呼吸あり。」
交通事故で歩行者としてはねられ、意識はなし。けれどかろうじて、呼吸だけはしている状態。
まだ息はある。なんとかこのまま。どうか、呼吸が止まらないうちに。
救急隊は、必死になって病院へと救急車を走らせる。
救命救急センターだって、懸命に準備をして、患者を待ち受ける。
懸命の治療。手の中からこぼれおちていく命。
残された、真新しいランドセル。 
実際、この日もこうした事故は起きている。 →こちらをクリック!

これが、救命救急の現実。
もちろん、歩行者としてだけでなく、車内の乗員として命を落とすケースもある。

「費用対効果の関係で、子どもは症例が少なく、対策がむずかしいという人がいる。」
そう(私の愚痴を)伝えたら、某先生は、完全に否定してくれた。
「なんですか、費用対効果って。子どもの一生の経済効果をちゃんと計算してから言ってほしいですね」
そのとおりだと、私も思う。
いくらの対策費をかけて、何人救えた。そんな単純な計算方式では、ダメだと思う。
少子高齢化の日本で、子どもがどれだけ大切な存在なのか、
費用対効果を言うのなら、ちゃんとした計算式をつくってほしいと思う。

「『こども、こども!』って、イワサダ、うるさいよ!」
そんな風に、そろそろ言われそうだけどさ。
そりゃ、私だって子どもをタテにする、モンスターペアレントは大嫌いだけどさ。
でも、子どもをタテにして、どうする?
子どもを守ることができるのならば、私が子どものタテになりますよ。なりますとも。

某先生、ありがとうございました!

ZCJ

モータージャーナリストの清水和夫さんたちが立ち上げた、交通安全問題を考えるチーム、
Zero Crash Japan。
こちらに加わり、一緒に活動させていただくことになりました。
本日は、そのひとつ「住宅地における通過交通を考える」ということで、
実際に、通過交通により住民の安全な暮らしが脅かされている「闇坂(くらやみざか)」の現地視察へ。

制限速度は時速20キロ。車幅は4メートルに満たないというのに、
すんごい速度で通り抜けていくクルマたち。完全なる「抜け道状態」なわけです。
外から見たら「こうしてみたら?」という案はいくつも浮かぶけれど、
実際に住んでいる人たちにしてみると、
周辺住民の方々への利害や影響などもあり、そう簡単にはいかないらしく。

こういう問題は難しいと、しみじみ。
でも、現場にこそ事実あり。こういう「足を運ぶ」「現地の声を聞く」ということをやらないと、
なにも見えてこないと、改めて感じたりしています。

会議室と現場の温度差

国土交通省交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会技術安全ワーキンググループの会議。
ふう、長い。

この部会が提出する、
「交通事故のない社会を目指した今後の車両安全対策のあり方について」(長い)の素案が配られ、
前回の「車内の子どもの安全」についての発言が、
ほんの一行も反映されていないことに、ぶっ飛んだ。

これが前回、3月のときの霞ヶ関。いまは新緑になっています。霞ヶ関のあたりを歩くのはかなり好き。

今日はおとなしくしていようと思ったのに、結局、ほぼ同じ内容を繰り返すことに。
なんで反映されないかなー。っつーか、なんでこの問題をスルーできるのかわからない。
K座長が「では、そのための案は?」って聞いてきたけれど、
それも前回、言いましたよね? 手元に議事録ありますけれど~。

子どもが怪我をする=チャイルドシートが正しく装着されていない=装着しやすいISO-FIXの普及を。

って、素案にあるけれど、そんなにうまくいかないから、今の現状があるんじゃなくって?
チャイルドシートが正しく使われないのは、使いにくいせいもあるけれど、それ以上に、
「なぜ装着しなければならないのか」が、正しくユーザーに伝わっていないから。
体の小さな6歳はしなくてよくて、大柄な5歳は義務あり、ってどういうこと? じゃ、なんのためにするの?
ユーザーには、まったくもって理解できない。
6歳の根拠を、バカな私にも理解できるように説明していただきたいものだ。

最初の10年は、チャイルドシートという装置を認知させ、普及させるのに費やしたとして、
これからの10年は、これを活かし、本当の交通安全への道具として使いこなしていく必要がある。
そのためには、
「6歳未満」となっている(ワケのわからない)ルールを、「身長140センチ以下」と変え、
現在、まったく安全性の確保できていない140センチ以下の乗員の安全を、
確保するための装置なのだと認識させ、
ジュニアシートも含めて、使っていかなければならないと思うんですけれど。

K座長は、「5年後の目標には、間に合わないことがいろいろある」と言っていたけれど、
べつに、技術的な何かを入れるわけじゃなし、
道交法や自工会の周知徹底活動なんて、その気になれば(←ここがポイント)、
すぐに、しかもユーザー負担金ゼロでできる、安全対策だと思います。

ついでに。高齢歩行者に対する、ヘッドライトの点灯って、どうなったんでしょう。
これも、技術的な変更も少なくて、ユーザー負担も超少ないし、すぐにできると思うのですが、
世界に先駆けて高齢化社会を突っ走る日本ならではの歩行者事故問題、
日本が研究しないで、どこがやるんでしょうね?