世界でいちばん優しいロボット(講談社)2021年6月


著者:岩貞るみこ
イラスト:片塩広子さん

SDGs(持続可能な開発目標)が、さかんに言われています。
でも、私にはずっと違和感がありました。
これを目標にするのは大切なこと。
ただ、こうした目標を掲げなくても、
自分のやりたいことを、まっすぐやっていったときに、
この目標とおなじになったなら、
自然で、無理がなくて、それこそ長く続けられるんじゃないかなと。

今回は、まさにそんな人たちを、3つの物語にまとめました。

チョコレート・カンパニー MAISON CACAOの石原紳伍さん。
自分のことより、まわりの人の幸せを考えちゃう人、
だれかを幸せにすることが、自分の幸せだという人。
石原さんの判断基準は、いつも、みんなが幸せになれるかどうか。
そして、こうと決めたら一直線。
なんたって、元ラガーマンですから!
自分が先頭に立って、多くの人を動かして、どんどん行動していきます。
コロンビアのカカオ農家の人を、幸せにしたい。
そのカカオでおいしいチョコレートを作って、日本の人たちを笑顔にしたい。
こうして作られたチョコレートは、ふわりと幸せの味がします。

アナゴ筒漁師の齋田芳之さん、研究者の清水詢道さん、東洋海洋大学の教授・東海正さん。
東京湾のアナゴの漁獲量が減り、アナゴの取りすぎが懸念されるなか、
アナゴの筒に開けた穴を大きくすることで、
しっかり稚魚や幼魚を逃がしながら、漁をする方法を考え出しました。
発案者である清水さんがやり方を提案し、
東海先生が、調査方法を考え、
東京海洋大学の学生さんたちが、
齋田さんが漁をする船に一年にわたって乗り込み、
漁師さんたちと同じように海に出て、調査を行いました。
横浜市の柴漁港で行われた取り組みは、神奈川県全体に広がり、
千葉県、東京都と、東京湾で漁をする漁師さんたちのルールになりました。
命令するのではない。納得すればみんなきちんと続けてくれる。
そんなお手本のような取り組みです。

最後は、表題にもなった、世界でいちばん優しいロボット、
OriHimeを開発した、ロボット開発者の吉藤健太朗(オリィ)さん。
小中学生のときに、学校になじめずひきこもり生活を経験し、
一日中、天井を見つめてすごす孤独のつらさを経験。
高校生のときに、孤独をなくすことに人生を使う決意をしました。
今は人工知能(AI)がさかんに使われていますが、
オリィさんの作るロボットは、人間が動かします。
動かすのは、病気やケガで家から出ることがむずかしい人たち。
手や指、目を使ってパソコンを動かすことで、
離れた場所にいるOriHimeが動き、話す言葉を相手に届けることができます。
(声が出せない人も、パソコンに文字を打ち込み、音にして出せます)。
2021年6月21日。偶然にもこの本の発売と同時期に、
東京日本橋に、OriHime-Dが接客する、
分身ロボットカフェの常設実験店がオープンしました。
OriHimeを使って、がんばる人たちに、ぜひ、会いにきてください!


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