著者:岩貞るみこ
イラスト:たら子さん
ある日、ぼんやりとテレビ画面を見つめていると、日本通運のTVCMが流れてきました。
それは、日通が手掛けた、埼玉県立小児医療センターの引越の映像でした。
衝撃でした。
病気やけがと闘うこどもたち。
いっしょに闘う医師と看護師、病院の関係者。
それをそのまま、病院機能を維持させながら運ぶ日本通運。
私のテーマである、命の大切さとチームワークが、そこにありました。
絶対に本にして、こどもたちに伝えたいと思いました。
この病院に、植田育也先生がいることも決め手でした。
植田先生は、日本でまだ数少ないPICU(小児集中治療室)を各地で立ち上げている先生です。
チャイルドシートを使わずに事故に遭い、
重傷を負って運ばれてくるこどもたちの治療にあたる植田先生は、
チャイルドシートの必要性をいつも大声で叫んでいらして、
私は勝手に「同志」と思っているのです。
病院の引越だけでは、ちょっと難しくなりそうかな。
編集担当のSさんと話し合い、3部作にしようということになりました。
なにを運ぶ? こどもたちにとって、なにが面白い?
Sさんが各地の動物園に連絡して、キリンのリンゴを見つけてきてくれました。
もうひとつは、私の大好きな重機が大活躍する、鉄道車両になりました。
本当は、もっと重機の活躍シーンを描きたかったのですが、
あまりにも私の重機愛が強すぎて、これではこどもたちが理解できないからと、
Sさんに羽交い絞めにされて(うそです)止められました。
思い起こせば、「お米ができるまで」でも、トラクター愛が爆発して、
田植えまでなかなかたどりつかなかった経緯もあり……。
3つの「運ぶ」物語。
取材中、なんども感じたのは、プロのプライドです。
ただ運ぶのではなく、そこにこめられた思いといっしょに運ぶ。
「俺たちに運べないものはない。」
運ぶ人たちのプロ魂、ぜひ、感じてください。