新品のタオル

ノンフィクションの取材が、秋の陣に突入。
そしてクルマ業界も花盛りの秋。
スケジュールをやりくりしつつ、取り乱しています(集合場所を間違えたり……すまん、若大将!)。
ノンフィクションは、正直なところ、手を抜こうと思えばいくらでも抜けるのだけれど、
私の場合、とことん現場に通い詰めないと書くことができません。
取材対象者のみなさんには、本当に申し訳ない限り。すみません!

なんで、こんなことになるかなあ。
一週間くらい、ちょこちょこっと話を聞いて、さらっと書ければどんなに楽か。
効率も上がって、ほかの取材にも手を広げられるのに。
(同時進行しようと思っていた企画を、来年以降にまわすことに……とほほ~)。
悶々としていたら、先日、お亡くなりになった俳優の大滝秀治さんのセリフに出合った。

「その役をね、自分自身に染み込ませて染み込ませて、そうしてにじみ出た部分で演じるんですよ」

そう! そうそう! この感覚! これなのだ。
自分の悶々が、この一言ですっきりと説明された気がして、ものすごく嬉しかった。
現場の雰囲気などすべてを、自分自身がその人になったぐらいの感覚になるまで染み込ませ、
その人が乗り移ったように書く……というか、書きたいわけで。そうしないと臨場感が出せないわけで。
さしずめ、新しい取材現場は、新しいタオルのようなもの、
最初は吸水性が悪くって、いくら水をかけてもほとんど染み込んでいきません。
でも、染み込み始めたら、ここからは一気です。

暑い中、わけもわからずのたうちまわっていた三ヶ月。
やっとタオルに水が染み込み始めた感じです。

週末は原稿書き。
今年は、講談社で好評連続出版中のアンソロジー本「ほんとうにあったお話」の
小学四年生の本にも参加させていただけることになり、現在、最後の格闘中です。