多数傷病者とドクヘリ連合

京都で小学生の通学の列にクルマが突っ込んだニュースが続々と入ってくる。
ドクヘリは飛んできたけれど、これだけ傷病者が出たのなら、
複数機が対応していかないといけないんだろうな。
これからは、連携~連合というカタチで、飛び道具を有効に活用する手段を、
道府県の枠を超えて考えていかなくては、なんだろう。

県で費用を半分、出しているから……という遠慮は無用で、
だってお互い様なんだから、お互い様なんだろうと思うのは勝手だろうか。
以前、富士スピードウェイでバーベキューコンロが爆発し、
多数傷病者が出たときは、静岡県ドクヘリx2機と、神奈川県ドクヘリx1機が集結し、
ドクターによるトリアージ&指揮のもと、的確な運搬&治療が行われていったっけ。
ああいった成功例を参考に、ぜひ!

晩御飯後だというのに、めずらしく原稿書き。
っつーか終わらない……。

宮崎ドクターヘリ、出動準備完了!

今週、宮崎県にもドクターヘリが配備されます。
牽引してきたのは、ひとりの小柄なドクターです。

最初の種の部分は、「海森堂」さんのブログから。 →こちらをクリック!

私はドクターヘリの取材を開始した2008年1月、
取材先だった日本医科大学千葉北総病院で、K先生にお会いし、
宮崎の地域医療、救命救急医療への思いを熱く語っていただきました。
K先生のデスクには、ぼろぼろになった千葉県の地図が4枚もあり、
(この写真は、拙書『命をつなげ! ドクターヘリ』に掲載させていただきました)
胸ポケットには最新の、でもすでにぼろぼろになった地図がいつも入っていて、
土地勘のない千葉県をヘリで飛ぶ劣勢を、
ぜったいに言い訳にしない思いが伝わってきました。

それから4年。
K先生にとっては行動を起こしてから7年めのこの春。
お金もない。人もいない。なんにもないところから、こつこつと、
でも確実に行動を起こし、周囲を説得し、準備を整え、
ついにこの日を迎えることになったわけです。

宮崎ドクターヘリ、なめたらいけません。
なんたって、救急隊&消防隊まで徹底的に教育されているんですから。
なんたって、思いが強いんですから。
たぶん、ここからが勝負だと思います。
千葉県とは違う、広いエリアのなかで、どう機能させていくのか。
宮崎スタイルのドクヘリが、今週、いよいよスタートです。

K先生、おめでとう! そしてここからも勝ち続けてください!

東京都にもドクヘリ希望!

京都・祇園で起きた軽自動車の暴走事故。
事故原因やドライバーの病歴については、今後、調査が進むとして、
いつもながら、こうした多数傷病者が出たときの救急対応には考えさせられること多しです。

今回、出動した消防・救急隊は16隊。そして消防ヘリが一機。
(上空をホバリングしていたので記録係りなのか、実際に患者を搬送したのかは不明)。
亡くなった方は、この文章を書いている時点で8名(含ドライバー)。
そして多数の重傷者。
しかし、いちどにこれだけの患者に完璧に対応できる病院は日本にはない。
世界にもないと思う。
一秒を争う重篤な外傷患者の場合、
救命救急を専門とする、外科医、麻酔科医、サポートドクター軍団、
ナースチーム、CT、オペ室……などが、
一瞬にしてタッグを組んで最強パワーを発揮しなければ、患者は救えないからだ。
そんなチームが、いつも3つも4つもある病院なんて、日本には存在しない。

だとしたら、救急隊は患者を分散させる必要がある。
二次救急しかできない近くの病院ではなく、少し離れていても確実に治療できる三次救急の病院へだ。
そんな時間との闘いのとき、最強の武器はヘリである。
京都は消防ヘリはあるけれど、ドクターヘリはいない。
そして、ドクターヘリのないエリアでの欠点は、救急隊がヘリを使いこなしていないことだ。

救急隊が患者に接触する。ヘリを呼ぶ。ヘリが向かってくる。
患者をどこでヘリに託せば、いちばん効率がいいか。
ドクターヘリを使いこなしているエリアでは、消防本部がいつもそのことを考えて場所を選択する。
私の取材していた千葉の、特に使いこなしているエリアでは、ほとんどロスタイムがない。
双方の距離、かかる時間などを瞬時に計算して、
リストにある臨時着陸場(小学校の校庭など)のなかから最適な場所を選択するからだ。
けれど、ドクヘリがないエリアでは、そうしたランデブー・ポイントの選択から迷うことだろう。

私が案じているのは、必ず起きるといわれている、首都直下型地震だ。
多数傷病者が発生したら、いったいどうなるのだろう。
間違いなく、すでに35機になろうとしている全国からドクターヘリが、大勢、飛んできてくれる。
乗っているのは、腕利きのフライトドクター&ナースだ。
運航しているのは、百戦錬磨のパイロットたちである。
けれど、受け入れる東京都は、いったいどうするつもりなのだろう。

阪神淡路大震災のとき、発生当日、ヘリで搬送できた患者はたった一人。
翌日の搬送は、わずかに六人である。
このままでは、あのときと同じことがおきかねない。
ヘリは持っているだけじゃダメで、使いこなさないと意味はない。
そのためには、日常的にヘリを活用しないとダメなのだと思う。

ああ、東京都、大丈夫なのかなあ。
地震で家が揺れだすたびに、そんなこと、考えています。

今日の原稿のお供は、きのう若大将が差し入れてくれた、ホワイトチョコのお菓子!
オレンジピールが練りこんであって、めちゃうまし! ありがとう!

HEM-Net

今年度、HEM-Net(認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク)の、
理事を務めさせていただくことになりました。
ドクターヘリが新たな展開を迎えようとしているこの時期に、
大役を仰せつかって血圧が上がったり下がったりですが、
ドクターヘリがその機動力を最大限に発揮できるよう、微力ながらがんばりますー。
本日は、先週から延期になった理事会へ。

そして、私が理事になる前に決まったのが、こちら。

ゼロクラッシュ・ジャパンが選ぶ、2011年度のセーフティ・オブ・ザ・イヤー。
HEM-Netが行った、ACCN通報実証実験に決定です!
(もうひとつは日野自動車のプリクラ搭載トラックです)

本日は、ジャーナリストの清水和夫さん、島下泰久さんにも来ていただきました。

高級車を中心に、活用されているヘルプネット。
車両に搭載されているデータロガーで衝撃を計測してつながりますが、
これを、ドクヘリ出動のトリガーにしようという動きがあります。
実験ではトヨタのAACNを使い、ドクターの初療開始時間までが10分以上も短縮でき、
有効性を証明しました。実証実験の様子は、→こちらをクリック!

内因性のものよりも、外傷性のほうが心停止からひきもどすのはむずかしく、
それゆえ、ドクターが接触するまでの一分一秒を争う状態。
交通事故の死者数を減らし、後遺症の程度を下げるためにも、とても有効なシステムです。
なんたって2010年ですでに、交通外傷でドクヘリが2000回以上も飛んでいるんですから~。

欧州では標準化が進んでいますが、日本では各メーカーがばらばらに開発しているということ。
未取材ゆえ、語尾を濁してすみません。鋭意、取材続けていきたいと思います。