ESC

たとえ高速道路であっても、自動車専用道であっても、動物が侵入することを100%防ぐことはできない。
今日の最高裁では、そんな判決が出た。
亡くなった方のご家族は、無念だろうが、
たとえ、裁判でどうあれ、関係者だって自分たちの作った道での死亡事故に、ココロを痛めていない人はいないと思う。
そして、事業評価委員のひとりとして、東日本高速道路が動物進入の対策に取り組んでいることも、申し添えておきたい。

動物が出てこなくたって、前を走るクルマが突然、止まることもある。
落下物が落ちてくることもある。
クルマが機械であり、人が運転している以上、道路上ではなにかが起こる。
それらをすべて、運転するときに対応しろというのは不可能だが、
少なくとも、ESC(横滑り防止装置)付きのクルマを手に入れることで、
危険度をぐっと下げることはできる。

障害物を避けようと、ダブルレーンチェンジ(右~左と、二回ハンドルをきって回避操作すること)すれば、
二回めは、必ず(といっていいほど)、おつりがきて、ほとんど(といっていいくらい)スピンする。
でも、ESCさえあれば、多くの場合、スピンせずにやりすごすことができるのだ。

私が前のクルマから、いまのクルマへと買い換えたのは、ESCの有無もある。
ESCのインストラクターになるにあたって、さんざん練習でスピンしまくったら、
怖くてESCなしのクルマには、乗りたくなくなったからだ。

燃費の数値と、価格で勝負しようとする日本車は、ESCの普及が圧倒的に遅れている。
ユーザーがお金を払わないから、という、クルマのプロとは思えない台詞も聞こえてくる。
リコールや欠陥車よばわりが怖くて、びびるより、
ESCを付けようとしない不誠実さのほうが、よっぽどださいと思うけれど。

ああ、昨日、反省したばかりだというのに、また、いらんケンカをふっかけてしまった気がする。
ま、いっか。

今日も原稿書き。やばいくらい遅れ気味。

日本救急医学会関東地方会

日本救急医学会関東地方会学術集会に行ってまいりました。

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小麦グルテンが原因で、ショック症状になる、という事例を聞いて、
パスタやパンやワッフルやホットケーキやカステラはもちろん、
マドレーヌだのドラ焼きだのマリー・ビスケットだのビスコだの……がないと生きていけない私は、
それだけでショック症状になりそうでしたよ、ウメカ先生。
しかも子供のころに出なくても、成人になってから出るケースが多いとか。がーん……。

さて、私の今回のお目当ては、ドクターヘリ取材でお世話になっている、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターと、日本大学工学部&理工学部が連携した、
日本初の医工学連携の総合的交通事故調査体制による、損傷原因究明システム。

警察の事故原因理由って「前を見ていなかった」「スピード出しすぎていた」の一点張り。
事故が減った理由についても「警察の取り締まり強化により」って、
おいおい、10年も前に21世紀になっているってのに……といつも舌打ちしちゃうんですよ。
予防安全にしても衝突安全にしても、ちゃんと現実見つめて、原因つぶしていかなくてどうする?

で、今回の医工学連携の場合、まず救命救急センターに運ばれてきた患者の損傷部位を把握し、
じゃ、車内のどこでどう傷ついたのかってことを、逆にたどっていくことができる。
机上の理論の衝突安全では見えてこない、現実がそこにあるわけです。
もちろん、患者と病院の信頼関係あってのこと。
退院後に協力してもらってこそ初めて成り立つ作業なので、一気にたくさんはできないけれど、
でも、好意的な患者による事故再現なので、それはそれはリアルなデータが集まるというわけ。

そして今日の発表で、げげげーっと思った事例発表がされました。
時速わずか25キロで石垣にぶつかった軽自動車の、
後部座席に座っていた70代の女性が、
シートベルトをしながらにして、心臓破裂を起こしたというもの。
25キロ、という数字は、あとから算出しているので、いささか疑問はあるものの、
でも、クルマの凹み具合を写真で確認すると、ほんとにバンパーとフレームがちょこっといっているくらい。
どうみても「大破」からははほどとおく、これで心臓破裂が起こるのか? と、目を疑いました。

女性は、胸骨粉砕骨折、心臓破裂(心タンポナーデ)、右肺損傷、右足骨折、という状態。
幸いにして救急隊の好判断でドクターヘリ要請になり、
徒歩退院できるほど快復されたので、今回の検証にご協力いただけているわけですが。
ちなみに高齢者が心タンポナーデになりやすい、というデータはないようですが、
今回は同時に胸骨粉砕骨折も起こっていることを考えると、
高齢女性の骨密度が低く折れやすい=心臓を圧迫しやすい、というのは、
十分に考えられることではないかと、医療シロウトの私は思うわけです。

現在、後部座席は高速道路に限りシートベルト着用の罰則強化あり。
でも、近い将来、一般道でも罰則適用になる方向で動いている。
後部座席のシートベルトにプリテンショナー&フォースリミッターを採用して、衝突ショックをやわらげないと、
そして、衝突アセスメントの点数をとるために、がっちがちに拘束するだけのシートベルトでは、
シートベルトで心臓破……という事例が、きっとこれからも起きるでしょうね。

少なくとも、前席にしかダミー乗せていない衝突アセスメントで、
「最高レベルを獲得しました!」と、お気楽に安全を宣伝するのは、いい加減にしていただきたい>国産メーカー。

医工学連携の交通事故調査は、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターの、阪本雄一郎先生と、本村友一先生、
小麦グルテンのアナフィラキシー例は、
日本医科大学千葉北総病院救命救急センターの、梅香満先生のご発表を参考にさせていただきました。

現場の真実

もはやルーティンワークにさせていただいている、
日本医科大学千葉北総病院、救命救急センターでの取材。

クルマを見つめ、自動車メーカー技術者の「言いわけ」だけを聞いていると、
それで納得してしまうけれど、でもやっぱり、現場には真実が落ちている。
落ちている、というのは、その場に真実が取り残されているからだ。
だれがその存在に気づき、拾い上げ、世の中に「つきつけて」いくのか。

今日も、交通事故関連の研究を続けておられるS先生にお時間をいただき、お話を伺う。
「ありえない!」
そう言いたくなるような、事故形態と負傷者の損傷部位に愕然とする。
ここまでくると、もはや医工連携は欠かせないと思う。

エアバッグとシートベルトの装着で、頭部と胸部の損傷は減り、
即死に近いケガは減っている。
でも、実質臓器と呼ばれる血液が充満している肝臓、脾臓、腎臓は、
シートベルトによって、傷つけられている。
ここが傷つけば、大量出血が起こり、病院に運ばれるのに時間がかかれば、
もしくは、すぐに開腹手術できる体制のない病院に運ばれれば、
確実に死んでしまう。

今日も気持ちの引き締まる思い。

でも、プリンはおいしい。=謎。

ラジオ・スペシャル

朝から原稿を書き、午後は、ラジオの収録@都内某所!

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今日の収録はこんなかんじ。スタジオを抜け出して、特別ゲスト用セットです。

口約束、というのは怖いもので、
「出てね」と言ったセリフに「いいよ」と軽くこたえたつもりが、
いつの間にか、本気モードで確定していたというのが、今回。
ラジオ・オーナーG氏の技あり一本勝ちでありました~。

そのゲストはなんと、T社のU副社長! じゃーん!
そしてPのチーフエンジニア、O氏! じゃじゃーん!

豪華だ。しかもU副社長もO氏も、ものすごーくお話が面白くて、
時間オーバーで、語っていただいちゃいました。
オンエアは時間制限がありますが、オンエア後にアップする、
ザ・モーターウィークリーのサイトでは、ポッドキャストでフルバージョンをお届けする予定ですので、
オンエアが聞ける方も、聞けないエリアの方も、ぜひぜひ、チェックしてください!
私のリンクから、おすすみくださいませ!

終了後はダッシュで移動。秘密結社・コードネーム『K』の会=謎。
ひじょーにマジメに、今後の交通社会を語り合っていたつもりが、
最後は、水みたいに日本酒があいていたという……センセイ、それでは焼酎断ちの意味がないんじゃ……。

やっぱりね。交通事故死者数を減らすためには、
救命救急体制をつくっていかないと、無理なような。
厚生労働省、年金あたりでもそもそやっていると、この波に乗り遅れますよ。
机の上で計算するだけのアドバイザーじゃなく、
ちゃんと救命救急の現場を知る人を、検討委員に入れてください!
よろしくお願いします。