効果評価

安全技術の効果評価は、

「それを装着することで、何人死者を減らせたか」

が、目標値になっています。なんでかっていうと、
小泉首相時代につくった、第八次交通安全基本計画が、

「2010年までに、死者を5500人以下にするぞ!」

と、宣言したから。10年間で死者数を半分以下。
人・道・クルマで3分の1ずつなら、クルマで1200人の死者数を減らしましょうってのが、
立ち上がったときの「安全基準検討会」の目標でした。
これ、当時の国交省(運輸省)では画期的なことだったそうですよ。
なんたって「数字」を明確に言ってしまったもんだから、達成できなければ誰が責任とるんだって。

あれから10年。着実に死者数は減っています。
まあ、不景気でクルマが走らなくなったり、若者のクルマ離れで暴走が減っているのも大きな理由なんですけれど。
(事故率はむしろ増えているという統計もあり)。

だけど、私、思うのです。あれから10年。だいぶ世の中も変わってきて、
これからも「死者数」だけ追うのでいいんだろうかって。
だって、あれほど自動車メーカーが開発費をかけて、歩行者保護ボディを作ったって、
年間、防ぎえる死として算出されたのは、わずかに 6人
これには、自工会も言葉を失っていましたですよ。

でもね。
たとえ亡くならなくても、入院日数が長くなったり、後遺症が残ったり、というのは、本当につらいもの。
歩行者保護ボディは、減ったのは6人とはいえ、傷害軽減はもんのすごくあると思うのです。
そのあたり、しっかり出していかないと、メーカーのやる気も、ユーザーの安心感も、出ないと思うのです。

なーんてことを思いながら、結局、原稿書いて過ごした土曜日。

ドクターヘリ出動実績

先日、全国で21機、飛んでいるドクターヘリの、昨年度の出動実績が報告されました。
詳しい数字は、HEM-Net のサイトにリンクしてあります。→こちらをクリック!

私が取材を続けさせていただいている、日本医科大学千葉北総病院 は全国トップの748回!
千葉県には、南部エリアを受け持つ、君津中央病院 が、325回も飛んでいるので、
なんと、1000回以上も活躍しているのですー。千葉、すごい!

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これは、北総ドクターヘリの、栄えある4000回無事故出動のときの、離陸直後の写真。
でももう、無事故出動は5000回を超えています!

うーん、やっぱり、千葉県と、ドクヘリや病院体制が整っていない他県エリアでは、
クルマの安全技術の効果評価ってまったく違ってきますよね。
ほんとうは、事故直後の予測生存率で検討していかないと、意味がない。
予測生存率=外傷患者の解剖学的重症度(ISS : Injury Severity Score)と、
病院到着時の意識状態、呼吸数、収縮期血圧から導かれる生理学的重症度(RTS : Revised Trauma Score)を基に
算出した生存確率(Ps : Probability of Survival )

もっといえば、事故直後に予測生存率を出さないとダメなんだけれど、
でも、それは不可能なので、じゃ、それならせめて病院到着時かと。
ああ、だけどそれでは、病院の救命救急センターの実力もばれちゃうから、むずかしいのかもー?
いや、その後の回復情報は伏せておいて、予測生存率だけ出すようにするとか、
いくつかの病院を抽出して、経年変化をみていく方法なら、あり得るかも?
というか、生理学的重症度は、その人の年齢や持病に左右されることが多いから、
とりあえずは、解剖学的重症度だけで判断するのがいいのかも?

ない脳みそで、もにょもにょ考えてみる私。

やっぱりこれからの安全対策は、医工連携。
現場のドクターたちに、上記レポートを作成するだけの労力は、時間的体力的に求められないので、
なんらかのサポート体制は急務かと思われます。

医工連携に興味のある方は、5月26日(水)@ホテルニューオータニ幕張で、
自動車技術会、日本自動車研究所、交通事故分析センター、日本損害保険協会と、
日本外傷学会との共催による、シンポジウムが開催されますので、ぜひどうぞ! →こちらをクリック!
プログラムの詳細はこちら。 →こちらをクリック!

朝から原稿を書き、夜は「いつかきっと」と願いつづけ、ついに行動に出た私です。
やっぱり自分から動かないと、チャンスは作れないわけでー。
オアシスちゃんとのランチ約束もとりつけたし(よろしくです~)、今月は、動きます!

HEM-Net

日本初! ドクターヘリとセットで活動する、ドクターカー登場!
日本医科大学千葉北総病院に、本日、納車されました!

doctorcar

ヘリと並ぶ姿。超かっこいい~!
車種選び、デザイン、法律関係などなど製作工程を、ずーっとそばで見てきた身としては、感激ひとしおですー。

関係者のみなさん、お疲れさまでした!
今後は、ドクヘリの飛べないとき(夜とか、濃霧とか)に出動予定です。
ドクヘリを補完する形でドクターカーを導入するドクターヘリ事業は、ロンドンで行われていますが、
日本では初めて。
活躍、期待しています!

そして私、本日は、全国展開に加速がついてきたドクターヘリの、
フライトドクター&フライトナースを養成するための、
(救命救急のドクター&ナースが、ほいっと乗れるような簡単なものじゃないんです)、
支援事業の審議会発足会合に、行かせていただきました。

たしかに国や県からの助成金はありますが、
それはあくまでも、ヘリ運航費用と、活動するときの人件費等々。
新しい県にヘリが配属されたとき、すぐに活用するためには、
あらかじめ、その基地病院となる救命救急センターのドクター&ナースが研修する必要があるのですが、
その旅費や滞在費はもちろん、教える側も教わる側も完全なボランティア状態。
貴重な人材が救命救急の現場からはずれることは、ひじょーに痛手なのです。

強烈な負担を強いながら、双方長続きするわけもなく、そして質の低下も懸念されるわけで、
せめて活動費(保険料なども含めて)の基盤をつくり、
ドクター&ナースが安心してトレーニングできる環境を整えようというものです。

資金源となるのは、民間からの寄付。法人、個人から受け付けることになりました。
民に加わってもらうことで身近に感じ、積極的に意識をもってもらい、よりよい事業にしていく狙いもあります。
私、ドクターヘリ応援団として、審議委員をさせていただくことになりました。

支援基金については、通常のヘムネットへの寄付金とは別に、特別会計で処理します。
興味のある方は、ぜひ、こちらのヘムネットのサイトでご確認ください! →こちらをクリック!

JPTEC

おおおーっ! 事故に遭遇!

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助手席の傷病者の首が動かないよう、がっちりガードしています!

いえいえ、リアル事故ではありません。
今日はJPTECの講習会を見学させていただいてきました。

JPTEC=Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care。
病院前の外傷観察・処置標準化プログラム。シロウト流に訳すと、
交通事故や転落などの外傷の患者さんが発生したとき、
救急隊員が、迅速に患者の状態を把握し、適切な病院選択をして運ぶために必要な
お作法を学ぶ、講習会です。
=あってますかね、K先生?

興味深いのは、受講生は救急隊員や消防隊員だけでなく、医師や看護師も受けること。
患者を受け入れる側の医師や看護師が、いっしょに学ぶことによって、
救急隊員が、どういう処置や観察をして連れてきたかがわかるわけです。
一秒を争う救命救急の世界において、この「共通言語を持つこと」は、とても重要なのです。

応急手当普及員の資格をもつ私ですが、
プレホスピタルケアを拝見することで、じゃ、プレアンビュランスはなにをすればいいのかが、
ほんのちょっと見えてくるような。
外傷の場合、首の保護を非常に気遣っているのがわかります。

通常の救命講習だと、すぐに「気道の確保!」と、首をぐぐっと動かしちゃいますが、
これ、脳&心臓系のトラブルならいいけれど、
外傷系は少し言葉を添えて、首のケアを伝えていかなくてはと、痛感しました。

首かー。首ねー。ヘッドレストの適切使用は、どうすれば浸透するんでしょうねー。